言い終わった後で、急に虚しさに襲われた気がした。


アイツは俺と同じで、きっと家族の存在を求めているだろうからと、そんなことを思いながらも何も出来ない自分に歯がゆさを覚える。



『龍司さん、本当にそれで良いの?』


「―――ッ!」


『そんな、人に託してしまうような悲しい言い方なんて、しないでよ。』


ただ、何も言えなかった。


本当は、今すぐにだって迎えに行ってやりたいけど、でも、ダメなんだ。


こんな状態で会えばまた繰り返すだけだし、傷つけるなんてもうしたくない。


何より、俺自身が傷つくことが怖いんだ。



「…すんません、お願いします…」


結局問われた言葉には答えずに、俺はそんな台詞のままに電話を切った。


これが今の俺に出来る精一杯で、少し震えた吐息を白灰色に混じらせた。


本当は、今、アイツがどうしてるのか聞きたかった。


どこでどうやって暮らしてて、ちゃんと飯食ってんのかとか、泣いてないかとかさ。


もっと言えば住んでるとこだって聞きたかったし、きっと聞けば教えてくれたんだろうけど、でも、そんな勇気はなかったんだ。


間違って、無意識にでも会いに行ってしまいそうだったから。


電話する勇気だってないくせに、何言ってんだよ、って感じだけどさ。


握り締めていた拳を緩め、地面へと、まだ煙の立ち昇る煙草を落とした。


強くなるには、どうしたら良いだろう。


そんなことを思いながら右腕の古傷を服の上から鷲掴み、苦々しさの中で唇を噛み締めることしか出来ない。


俺は馬鹿だからさ、お前のことばっか考えてんの。