向日葵-the black cat-

「どうしようか迷ったけど、一応言っといてやるよ。」


「…え?」


一瞬、何のことだろうと身を固めた。


眉を寄せてみれば、俺の瞳を真っ直ぐに捉え、彼は言う。



「安心しろ、悪い報せじゃないから。」


思わず構えてしまった俺に投げられたのは相変わらずの回りくどい前置きで、最後の煙を吐き出しながら俺は、煙草を消すのみ。



「お前が殴った男、梶原?
アイツ、昨日の晩に捕まったらしいよ。」


さすがに、そんな台詞に我が耳を疑ってしまう。


何度かまばたきをしてみれば、煙草を咥えたヨシくんは、思い出すように宙を仰いだ。



「一昨日退院したらしいんだけど。
婦女暴行の現行犯で、巡回中のおまわりに見つかったって。」


「…何、それ…」


「まだ取り調べ中ではあるけど、数件の被害届に書かれてた犯人の背格好とも似てるらしいから。
もしかしたら、余罪も出てくるかもしれない。」


そう、彼は嫌悪を抱く対象物のように話す。


つまりはあの梶原って男は、夏希だけじゃなくて、他の女もレイプしてたってことだろうか。


力が抜けてしまったけど、でも、ひどく憎々しく感じて、苦虫を噛み潰すように俺は、唇を噛み締めた。



「きっと、梶原がお前のことで警察に被害届を出さなかったのは、自分が危うかったからだよ。」


「俺のことなんてどうでも良い。」


自分の心配なんて、二の次だ。


夏希はこのことを知っているのだろうか、出来ることなら俺が、お前を苦しめる存在はもうどこにも居なくなったのだと、教えてやりたいのに。


それでも、勝手に強くなるなよ、って思うのは、エゴなのかな。


お前ばかり羽を広げてしまったようで、益々置いて行かれる気がする。


智也の胸で、泣くのかな、って。