あの日から、2週間くらいは過ぎただろうか。


俺は相変わらずヨシくんの部屋のソファーの上からほとんど動くことはなく、今日も馴染み過ぎたアルコールを流し込んだ。


すっかり梅雨に入った毎日は雨ばかりで、余計に憂鬱さを拭えない。


あの部屋を明け渡さなければならない日も近いと言うのに、雨だから、なんて自分自身に理由付けばかりしているのだ。


胸焼けさえももう麻痺してしまったかのようで、こんなものに依存しているなんてヘドが出る。


鳴りもしない携帯を肌身離さず持ち続けてるなんて滑稽で、いつも、手放してしまったぬくもりを、夢や記憶の中で抱き締めることしか出来ないのだから。



「…また、すげぇ量飲んでますね。」


「智也クンには関係ないでーす。」


ヨシくんが不在だと言うのに何故かやってきた智也は、呆れたように俺の向かいへと腰を降ろした。


聞こえないように舌打ちを混じらせながら、そうわざとらしく言ってみたけど、ぶっちゃけ視界にさえ入って欲しくない。



「言いたいことあるなら、さっさと言って帰れ。」


「ホント、俺のことそんなに毛嫌いしなくても良くないっすか?」


「じゃあ、お前は俺のこと好きなんだ?」


「まさか、大嫌いですよ。」


珍しく意見が一致したな、なんて思ったけど、俺は苛立ち紛れに煙草だけを咥えた。


沈黙に雨音が溶け、湿っぽい空気の中でため息混じりに白灰色を吐き出せば、彼は落としていた視線を俺へと再び持ち上げた。



「夏希の親父、死にました。」


「…マジ?」


「マジっす。」


さすがに目を丸くして問い返してみたけれど、それでもその瞳の奥は、嘘だとは言ってくれない。


結局戸惑うように視線を外し、顔を覆うようにして唇を噛み締めた。