向日葵-the black cat-

「あーあ、もう。
またお前は昼間っから酒飲んじゃって。」


弾かれたように顔を向けてみれば、呆れ半分でこめかみを押さえたヨシくんの姿。


朝、仕事に出て行ったヨシくんを奥さんみたく見送ってやったら軽くキレられて、で、そのまま酒飲んでたんだけど、どうやら俺の様子を見に来たらしい彼は、ご立腹。


まぁ、それも当然だろう。



「…お前は嫌なことがあるとすぐに酒浸りになるよな。」


「どうしようもない男でごめんね。」


「ホント、どうしようもないよ。
父親ソックリってゆーか、女のことでそんなになる辺り、遺伝だね。」


全然笑えねぇよって、そう思ったけど、でも、その通りなんだから嫌になる。


朝は太陽が顔を出してたけど、それもいつの間にやらかげってしまい、薄暗い色した空はやっぱり夏希のようだと思った。


目の前にはいくつもの飲み終えたビールの缶が転がっていて、もちろん灰皿はいっぱいなのだから、潔癖なところがあるヨシくんがキレるのも、まぁ当然だろう。



「マリファナに逃げないだけ偉いって褒めてくれないんだね、パパは。」


「強制入院させられたくなきゃ、ままごとはやめろ。」


「はーい。」


「…ホント、ただの酔っ払いだな、お前は。」


昨日の記憶は一切思い出せないのに、なのに他のことは蓋をしてるはずなのに、思い出すばかりするんだ。


こんなの、酒飲んでなきゃ耐えられないって。



「智也、何か言ってた?」


「何も。
てゆーか、珍しく智也の話?」


「犬は苦手だ。」


「けど、猫よりはよく働く。」


「じゃあ、俺なんか捨てれば?」


「捨てたってお前の戻ってくる場所はここしかないだろ?
それ以前に、俺は猫の方が好きなんだ。」


クスクスと笑みを零してしまった俺に、向かい合う彼は“会話にならない”と言って肩をすくめた。