向日葵-the black cat-

玄関で振り返ってみれば、口元を緩めた顔の智也はそう言って視線を落とした。


マジ、お前は最後まで格好良いヤツだよな、なんて思いながらも、俺も思わず視線を下げてしまう。


悔しいけど、コイツにはそれなりに恩もあるし、きっと夏希が今まで頑張って来れたのは、少なからず智也の力添えのおかげだってことはわかってる。



「サンキューな、智也。」


「…意外なこと言いますね。」


「最初で最後だっつの、バーカ。」


結局はふたりして、そんな感じで笑ってしまった。


大っ嫌いだけど、でも、憎み切れないっつーか、何つーか。



「あんま余裕ぶっこいてたら、知らない間に俺に取られてるかもしれませんよ?」


「上等でーす。」


「へぇ、そりゃ面白い。」


口元を上げる俺と、同じ顔してる智也。


ガラにもない挨拶もそこそこに、俺は愛しい夏希と牛乳の待つ、あの古びたアパートへと帰るためにドアを開けた。


開けてみれば、幾分傾き始めた昼下がりの陽に思わず目を細め、今日も良い天気だな、なんて思ってみたり。


あれほど似つかわしくないと思っていたはずの太陽も少しだけ嫌いじゃなくなり、何となくだけど、綺麗なものを綺麗だと感じられるようになった。







「ただいま。」


「お帰り。
てか、早かったね。」


「ん、おみやげ買ってきた。」


「…牛乳?」


「違う、これは俺の。
お前のヤツは、ヨーグルトだよ。」


そう言って買い物袋ごと差し出してみれば、彼女、夏希は困ったように肩をすくめた。


すっかり日当たり良好な窓辺からは西日が射し込み始め、部屋一面がオレンジの色に染まっている。