向日葵-the black cat-

「喧嘩するなよ、お前ら。
俺の頭痛の種が増えるんだよ。」


淹れたてのコーヒーをすすりながら、割って入るようなヨシくんのそんな言葉。


智也は密かに勝ち誇ったような顔で口元を上げていて、やれやれと俺は、ため息だけを混じらせた。



「知ってるか?
犬と猫の喧嘩ってのは、人間は喰えないんだぞ?」


「意味わかんねぇよ。」


「俺から見ればくだらない、ってことだ。」


「あっそ。」


「まぁ、平和ではある証拠だな。」


フッと口元を緩めただけの彼は、まるで不貞腐れるような俺にそんな言葉を落としてくれる。



「…平和、ねぇ。」


本当に、あれから毎日が忙しくも穏やかに過ぎていく。


パパが居て、ママが居て、ばあちゃんも居て、んで舅のような智也も居て。


何より夏希が傍に居てくれるだけで、こんなにも毎日幸せだなんて思いもしなかった。


愛して、愛されて。


そんな他愛もないだけのことを感じられるようになったのは、彼女のおかげに他ならない。



「俺、そろそろ帰るわ。」


「もう?」


「話は終わったっしょ?
つか、卵と鶏肉買って帰らなきゃだし。」


「…何それ。」


「今日は親子丼なんだってさ。」


俺らはもう、そんなものを食っちゃえるくらい、過去を過去だと思えるようになったのだろう。


智也もヨシくんも大爆笑で、うるせぇなぁ、なんて思いながら勢い良く立ち上がり、昔の住み家からきびすを返した。



「龍司さん、お幸せに。」