それからすぐに、俺は夏希のワンルームに転がり込んだ。


彼女が言ってた通り、隣のばあちゃんの煮物はマジで最高だったし、お互い、手を伸ばせば抱き締め合える距離に居るのも、悪くなかった。


狭いシングルのベッドで身を寄せ合って、色んな事を語りながら毎晩、気付けば眠りに落ちてる感じ。


たまに一緒に洗車してさ、そういやこの前は、香世サンとも3人で飯食ったっけ。


こんなに毎日楽しいのなんて、きっと俺の人生で、初めてだったのかもしれない。








「龍司、夏希チャンと結婚でもするの?」


久々にヨシくんちで開店準備の大詰めの話をしていると、煙草を咥えた彼は、不意にそんなことを問うてきた。


思わず首を傾けてみれば、そんな俺に向け、クスリと笑顔が零される。



「結婚、すれば良いのに。」


「…どしたの、急に。」


まるでらしくないことを言うな、と思った。


何より考えてさえいなかったことだし、ましてやこんなことを言われるなんて、と俺は、静かに白灰色を吐き出した。


暑さににもすっかり慣れ、ソファーに注ぐ太陽の光を浴びて、目を細めながらにヨシくんへと視線を返してしまう。



「愛の極意だよ。」


「…結婚することが?」


「違うよ、同じ墓に入りたいと思うことが。」


「…何それ?」


たまにこの人は、言ってることが意味不明すぎて、ラリってぶっ飛んでるんじゃないかと思うことがある。


シラフだってことはわかってるけど、でも、一体何が言いたいのやら。



「後悔、してるんだ。」