「そういえば、智也で思い出したけど。
この前もさ、わざわざあたしの誕生日祝うために押し掛けて来たんだけどさ?」


「…誕生日?」


「そう、今日だよ?」


思わず言葉を遮ってみれば、キョトンとして告げられたのは驚くような事実。


マジかよ、と思った。


今日って、それって俺と同じ日に生まれたってことじゃん、って。



「そっか、おめでと。」


思わず噴き出してしまいそうで、俺は真実さえも伝えぬままに、そう軽く言ってしまう。


だけども今、この瞬間、俺は運命ってヤツを信じたよ。



「そんじゃ、誕生日ってことだし、どっか行こうぜ。」


お互いの誕生日に、しかもこんな風にして再会するなんて、あるのだろうか。


別に俺自身のことは良いけど、でも、今は色んなことを祝いたい気分ってゆーかさ。



「…良いのに、別に。」


服を着ろと促したのだけれど、彼女はそう口をすぼめるだけ。


それでも俺はいそいそと煙草を消し、どこに連れてってやろうかと口元を上げてしまう。



「馬鹿、お前の人生の記念日だ。
俺が祝いたいっつってんだから、黙って祝わせろよ。」


なのに、折角言った台詞を彼女は何故だかクスリと笑い、一体何が可笑しかったのかと思ってしまうのだが。



「どうせなら、あたし達の再出発でも祝おうよ。」


刹那、笑い声に混じり鼓膜を揺らしたのはそんな台詞で、驚くのと同時に、何だかなぁと俺は、肩をすくめた。


負けたよ、お前には、ってさ。


愛しさばかりが込み上げて来て、俺、やっぱお前じゃなきゃダメだわ、って。