「でもさ、おばあちゃんとか居てくれたし?」


「…ばあちゃん?」


「そうだよ。
隣の部屋に住んでるんだけど、煮物が天下一品なの。」


「へぇ、良いね。」


「智也も香世ちゃんもお節介なほど電話くれたりしてさ、何だかんだで支えてもらった感じ。」


智也、というワードに、俺は言葉を持てなかった。


聞きたいけど聞きたくないってゆーか、やっぱ俺の知らない彼女を知ってる分、嫉妬があるのだろうとは思うけど。



「でもさ、あたしやっぱアンタじゃないとダメみたい。」


「―――ッ!」


苦笑い混じりに漏らされたそんな台詞が俺の鼓膜を揺らし、僅かに瞳を大きくしてしまった。


何だよ、心配して損したじゃん、とか、どんだけ気にしてたと思ってんだよ、とか。


色々と言ってやりたかったけど、でも、諦めるように俺は、小さく吐息を吐き出すのみ。



「じゃあさ、俺らはみんなに感謝しないとダメなんだね。」


「そうだね。」


ヨシくんにしてもそうだけど、きっと俺らは、色んな人のおかげでこうして今があるんだろう。


だからこそ、それを忘れちゃダメなんだろうし、もう、心配させるようなことはしたくない、と思った。



「ふたりでさ、これから頑張っていこうよ。」


ふたりで、と言った俺に彼女は、口元を緩めるようにしてまた、コクリとだけ頷いてくれた。