「何やってんだ!
全然集中出来てなかったじゃないか!」
「――ごめんなさい…」
「このリハがどれだけ大事か分かっているだろ?オケががわざわざお前の為に演奏してくれてるんだぞ?!」
「――はい…」
船越は溜め息をついた。
そして雪依の腕をつかみ
「行くぞ」と言い、車を走らせた。
そこは以前、二人が通っていたバーだった。
「バーボンとモスコミュール」
「覚えてくれてるんですね…私が好きなの」
「何があったんだ」
マルボロを出して、船越が聞いてきた。
「――…」
「彼、留学の話が来てるんです」
「へぇ…あの絵描きの」
「私、彼に笑って送ること出来なくて…」
涙が溢れる。
「私、俊のこと好きなのに、応援したいのに…」
「―ま、そうだろうね」
「―え?」


