優しい檻


「―あ、お母様。ご無沙汰しています。」

「―本当に。
コンクールもうすぐなんですって?」
「はい、レッスンも違う方にお任せしてしまい、すみません。」

「――…」
俊一の母はしばらく黙っていた。
「あの…お話とは?」

「俊一と会わないでもらいたいんです。」
「え?」
「―お二人の関係は私も前から存じています。
先生とならと私も安心していました。」


「でも、あの子の未来を妨げるのなら、話は別です」

「あの…どういうことでしょうか?」

「俊一の絵を評価して頂ける方が、彼をフランスに留学を勧めてくれました」

「けれど、あの子はまだ迷っています。原因はお分かりでしょう、先生あなたです」