「―確かに、私先生に捨てられました。
でも、付き合ってた頃はつらくて苦しくて気付かなかったけれど
先生と離れてみて、気付けました。
やっぱり、私ピアノが好きなんだって。
そして先生のピアノが好きだって。
だから、こうなって良かったって、本当に思っています。」

雪依は頭を下げ、
「お願いします!
また教えて下さい!」

やがて船越の手が頭に触れた。

「初めて俺の所に来たときみたいだな。」
「先生」

「思い出すよ。相変わらずだな。お前は。」

船越は、口の悪さでは考えられない位優しい顔をしていた。

先生もあの時と同じ顔してるよ…


―そうして再び彼とのレッスンが始まったのだ。