「自分で渡せばいいのに」

サークルの後輩からも渡されて、うんざりした私はそういった。
晴菜ちゃんのメガネの奥の瞳が大きくなった。肩までの何の手も加えてなさそうなストレートの黒髪がさらりと揺れる。

「え、いいんですか?
だって、彩先輩の彼氏なんですよね?」

「ううん、違うよー。
アイツ、彼女作らない宣言してるもん」

私は誰にでも言うように、そう、さらりと告げた。


それが、間違いの始まりなんて思うことすらなく。