「彩華、これ。
 城崎さんに渡してくれない?」

クリスマスが近づくと、毎日のように女性たちが私のところにやってきて、ヒコへのプレゼントを渡していく。

私は郵便配達員かよ!とぼやきたくなる。
こういうのって、本人に直接渡してこそ意味があるんじゃないの?

皆にだって、もちろん毎回そう言ってる。
のに。

誰も私の助言になんて耳を傾けてくれないのだ。

ヒコ、こと。
城崎伸彦(きのさきのぶひこ)は、私と同じ大学二回生で、同じ音楽サークルに所属している。
私と違うところと言えば、イケメンで、ひたすらモテて、それなのに自ら恋愛しない宣言をしているというあたりだろうか。

私、荻原彩華(おぎわらあやか)は、今年の夏。彼氏に振られたちょっと気の毒な女の子。
次の恋愛に進む気にもなれず、この、恋人居ない宣言中のヒコとよく一緒に遊んでいる。

だからこそ、私は大学のキャンパスで女性たちからクリスマスプレゼントを渡されるハメに陥っているのだが……。