「……、……」


遠くで声が聴こえる。

どうやら自分を呼んでいるようなのだが、イマイチ意識がはっきりしなかった。

「……はる、三春!」

「っ!」

耳許で名前を叫ばれ、三春は思わずがばりと勢い良く起き上がる。

自分も十分に驚いていたが、傍らでしゃがみ込んでいたルームメートは更にびっくりした様子で瞳を瞬かせていた。


「えーと…はよう、浮間」

「うん、おはよう。随分と豪快に起きたな、今日は」


そう言ってくつりと笑うのは、三春の居る寮のルームメートである浮間恭介である。


体育学科に所属する生徒らしく、短く切った焦げ茶色の髪に切れ長の目。

すらっと長い手足は程よく筋肉質で、同じ男だと云うのに細く頼りない身体を気にする三春として、とても羨ましい限りだと良く感じることがある。


『はぐれ』として周囲と離れた集団生活を取る三春にとって、浮間は頼れる兄貴分のような存在だった。