ハクバの王子

手を繋いだまま校舎に入るとき、
すごく緊張した。


みんなの視線を感じる気がする。

自然と手に力が入る。


「どした？」

私の異変に気がついたのか、雨宮君が優しく話しかけてくれる。

「ちょっと緊張しちゃって･･･」

「大丈夫だって。つーか、逆に見せつけてやろうぜ」

そう言って、握っていた手を離し
私の肩を抱き寄せた。

「ちょ･･･みんな見てるよ！」

「気のせいじゃない？」

赤くなる私を見て、面白そうに笑う。


とか言ってる私も実はすごく嬉しかったりするんだよね。




靴箱で靴を履き替えていると
うしろから聞き慣れた声がする。

「ヒナコ、おはよー。体大丈夫？？メールも返ってこなかったから心配してたんだよ」

「ユキ！おはよ。心配かけてゴメン。いろいろあってさ」

「ヒナコちゃーん！元気になった！？オリエンテーションの日いなかったから心配したよ」

「服部君。おはよ。心配してくれてありがとう。もう大丈夫だよ」



不思議。


服部君とユキと私と、
３人でいるときが一番辛かったのに
今は何とも思わない。
服部君ともこんな風に普通に話せている。

今までの感情がウソだったみたい。



「ヒナコー教室行こ･･････ってあ、ユウヤ！はよ」

「コウタ！はよー。って･･････え！？ちょっと待って･･･二人って･･･え！？」

「ヒナコ、もしかして二人って付き合ってる？？」


ユキも服部君も意表をつかれたみたいに驚いている。

二人とも驚きすぎ･･･


「そうなんだよ。俺ら付き合うことになったから。」

さらっと、当然のように平然と言う。


「ちょっと待って！！いつから！？何で？ってか言ってよー！ちょっと後で事情聴取ね！！」
怖いよ･･･ユキ。