ハクバの王子

恐る恐る話しかけてみる。
「もしもし?」

耳には、聞き覚えのある声。
「もし・・も・・・し」

「えっと・・・雨宮君?」

「ヒナ・・・コ?ウソ。マジ・・・で?」

「うん」

「どしたの?」

「声が…聞きたくて」

一瞬黙る雨宮君。


『うわぁ~…もしかして引いた!?』

自分が口走った言葉に後悔した。


「俺たち…すげーよ。俺も今電話しようと思っててさ、通話ボタン押す寸前でヒナコから電話だったから、びびった!」

「えっ!そうなんだ。よかった」

変なこと口走ったから、引いたと思った…


「よかったって何が?」

「ん…違うの、こっちの話」

「ヒナコの声、聞けて嬉しいよ。声、辛そうだけど平気?」

「だいぶ楽になったよ。明日は学校行けると思う」

「よかったなー治って」

「あのさ・・・昨日は、ありがとね。来てくれて。すごくうれしかったよ」

「俺も」

「あの・・・さ・・・私たちって、これから・・・どうなる・・・のかな?」

「そりゃー付き合うんじゃね?嫌?」

「本当に!?嫌じゃない!よかったぁー。私も雨宮君と付き合いたい」

“付き合う”って言ってくれた雨宮君。
その言葉がすごくすごく嬉しくて
思わずでかい声で叫んじゃった・・・。

心臓がドキドキして
携帯を持つ手が震えてる。


「あはは。なんじゃそりゃ。ん?ってことは、ヒナコ俺のこと・・・」

「・・・・・・・・・すき」

「まじ・・・で・・・?」

「・・・・・・だいすき」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・おれも」



たぶん、ずっと前からスキだったんだと思う。
どっか気持ちにセーブがかかってて、一歩が進めなかったんだと思う。


私には、もう雨宮君しか見えないよ。