ハクバの王子

ヒナコが緊張しているのは明らかだった。

布団に潜ったまま鼻から上だけ覗かせて
自分の縄張りを守っているライオンみたいだ。

俺は、ヒナコの緊張を解くために
思いついたままに話しかけた。

というか、俺も二人っきりのこの状態に
だいぶ緊張してたからそれをごまかすってのもあった。



「お前オリエンテーション行きたかったわけ?」

「そりゃ・・・行きたかったよ。雨宮君は行きたくなかった?」

「いや、俺も行きたかったよ。そういうのスキだしな」

「え?雨宮君もスキなの?なんか意外ー」

「んだよ!それ。俺だって公園歩きたいときあんの!」



俺たちは他愛もない会話をして笑い合った。

気づいたら昼過ぎだった。


「お!もう昼過ぎてんじゃん。昼コンビニで何か買ってくるわ」

「あ、本当だ。私、何か作ろうか?」


考えてもみないセリフだった。


「もう怠くないし、簡単なものだったら作れるよ」

ヒナコの手料理?
やばい。すげー食べたい。
俺はヒナコのその言葉に甘えることにした。

「マジで!?じゃあ作って。ヒナコの手料理なら何でも食べたい」

「あんまし期待しないでね」

「なんでも食べるし!ヒナコが作ったものなら」


これは本心。

今まで何度か女の手料理は食べたことあった。

けど、ホントに嬉しいと感じたことはなかった。

その中でヒナコの言葉は結構嬉しかった。





ってか、かなり・・・。