雨の中、急接近した日から一歩が始まった。


あの日から俺たちは一緒に帰るのが当たり前になった。


「図書室に待ち合わせよう」

そう言い出したのはヒナコだった。

理由を聞くと、

“本が読みたいから”
だそうだが、それは信じてない。


俺が思うに、
ユウヤたちに俺らの関係を知られたくないのだ。
この俺たちの微妙な関係を・・・
だから人が滅多に入って行かない図書室を待ち合わせ場所に指定したのだろう。



理由はどうあれ、ヒナコと二人っきりになれる時間が増えたのは
俺にとって最高の出来事だった。




いつも待ち合わせ場所にはヒナコが先に来ている。
わざとらしく本を読んで待っていて
俺が入っていくと笑顔でほほえんでくれる。


しばらく図書室でまったりしてから帰るのが当たり前になった。


「つーか、ちゃんとそれ読んでるわけ?」

「読んでるよー!失礼な!」

「でも、それ上下逆だけど?」

「え!?うそ!?」

そういって慌てて確認する。

「ウソだよー。やっぱ読んでないんじゃん」

そう言うと、ヒナコはふくれっ面で
「いじわる」
と上目遣いで言ってくる。


そんな姿を見るのがスキで、そんな会話を毎回していた。
ヒナコは、毎回だまされてくれる。




図書室が俺たちの思い出の地となった。