ハクバの王子

ユキたちと一緒に帰りたくなくて、用事あるとか言って嘘ついて、私は図書室にいた。


特に何の本を読むでもなくただボーッとしていた。




時計を見たらもう6時。


外は雨が降っていた。




憂鬱な気分で靴箱へ向かう。

さすがにもう学校内には人の気配はなかった。



靴箱で靴を履き替えたが、人の気配を感じて振り向いた。


会いたいけど会いたくない人

雨宮君がいた。



雨宮君は、ちょっとだけ驚いた顔を見せて目を逸す。


不良なイメージだったからこんな時間まで学校にいるのが信じられなかった。

服部君達と帰ったと思ってたし、ちょっと気まずい…


でも、


嬉しいって思ってる自分もいた。


「外雨降ってるね」

雨宮君に言われて、咄嗟にいつも持ち歩いている折り畳み傘を差し出した。



そしたら、なぜか相合傘で帰ることになってた。


肩を抱かれて、同じ傘に入る。
私の歩幅に合わせてゆっくり歩いてくれる。
ぶつかるくらい近くに雨宮君を感じてドキドキしてる。

『わーっ…顔赤くなってるよ』


緊張しすぎて手が震える。
それを隠すように体の前で鞄を強く握り締めた。