「あ…雨宮……君?こんな時間まで学校いたの?」

目を見開いて驚いたように言ってきた。
またこの顔…ウケる。

「あ?…ああ、ちょっと先生に呼び出されて」

「あ、そうなんだ…。」

俯きぎみで微かに笑いながら言う。


「綾瀬さんも、今帰り?」

「そう…だけど…」


『チャンスだ。攻撃開始だな』

俺は接近を試みた。

「そっか。うわ~外雨じゃん。」

「あっ、私傘持ってるよ!」


慌てて鞄から真っ赤な折り畳み傘を出す。
こいつ、俺の罠にまんまとハマッてる。
単純だ…


「ほらっ」

すごいでしょ
と言わんばかりの満面の笑みを俺に向けた。

初めてみた、こいつの満面の笑顔。
やばい。
ドキッとした。

「じゃあ、今日も家まで送るよ。傘、貸して」

綾瀬陽奈子が右手に持っていた赤い傘を取り上げて
開いた傘を俺は左手に持ち、彼女に雨がかからないように
傘を彼女の方に傾け、肩を抱き寄せた。


「行くぞ!」




俺は綾瀬陽奈子の顔を覗き込み、目をみて今まで誰にも見せたことないくらいの満面の笑みで言った。



みるみる顔が赤くなる。

可愛い奴。
いじめがいあるな。



自分がSだと再確認した。