素通りしてく…


そう思ってた。





でも、予想外に私の目の前で立ち止まった。


「傘ささないで何してんの?」

「…………」

「もしかして、迷子?」

「…………」

「風邪引くよ?」

「…………」




突然のことすぎて声が出ない。

しかも
こんな格好じゃ
恥ずかしくて顔上げれないよ!


下を向いて黙ってる私に
彼は何かを察したようだった。

「この道真っ直ぐ行くと金閣寺の裏に出るから。」
と、自分が来た道を指差す。

「…………コクッ」
頷くことしかできない。


「これ、使えよ。じゃあな。」

「えっ、ちょっと…」


そう言って
無理矢理私の手にビニール傘を握らせて

アメの中を
走って行ってしまった。





『トオリアメみたいな人』




彼が立ち去って少ししたら
何ごともなかったかのような
青い空が
広がっていた。