ツーアウトツーストライクで迎えた最終回。
芦原の最早一発逆転に掛けるしかない合コンも半ばになり、女の子達も一応機嫌を治していた。
しかし。
災難は続くものである。
すっかりアルコールが入ってご機嫌な、一番奥の席に座っていた女の子が店内に響き渡るほどの大声で言った。
『芦原さぁん。犯人逮捕の時の武勇伝聞かせてくださぁい!』
それに合わせて他の二人も
『よっ、イケメン刑事〜』
と囃し立てた。
当然ながら。
マークしていた男がすっと立ち上がりレジの方へ向かった。
……マズイ!
『先輩、男が店出ます』
芦原はマイクに向かって囁く。
『何ぃぃ?』
神山の素っ頓狂な声がした。
『もうすぐそっちに着く。何とか引き止めろっ』
『はいっ』
芦原は立ち上がり男を追い掛けた。
『すいませんっ』
声を掛けたが男は無視して会計を済まし、店を出ようとした。
『すいませんっ』
芦原は駆け寄って男の肩を掴んだ。
『……何ですか?』
男はゆっくりと振り返った。
芦原は警察手帳をかざして言った。
『二、三お伺いしたいことが』
『………』
刹那。
男はスーツの胸ポケットから黒く光る小銃を取り出し、まっすぐ芦原の額に向けた。
とんでもない災難だ。
芦原の背中を冷や汗が滑り落ちた。


