「紘平さん、この資料なんですけどぉ…」
こいつは高原。
今年の春に大学を卒業して入社したばかりの新人だ。
いかにも今どきの子といった感じのヴィジュアルで、ホストみたいな、チャラい印象だ。
話す時も語尾を伸ばすし、驚いた時は必ず「まぁ~じっすかぁ?」と言う。

高原は入社してすぐにデスクが隣になった。
それからは俺に色々質問や相談をしたり、事ある度に頼ってくるようになった。
見た目からは俺とは真逆のタイプの人間に見えるが、根は真面目でものすごく周りに気を遣う性格だ。
波長が合うというか、意外と一緒にいて心地がよい。

高原は今日の夕方からの打ち合わせの資料について質問してきた。

「なんかぁ、このモデルさん、あんまり30代以上からは人気ないみたいっすよ。」

今度うちが制作するシャンプーのCMに起用する予定のモデルの話みたいだ。
「そぉなの?」
俺はパソコンに向かいながら答えた。
「なんかぁ、今日上がってきたリサーチだと10代20代の若い子からは結構人気あるみたいなんですけどぉ。」
「ふ~ん。てか俺もあんまりその人好きじゃない。何か、“造られた感”マンマンじゃん?」
インターネットでそのモデルを検索して、顔写真を出した。
高原はその写真を見ながら
「あ~、100パーいじってますね。」
「だいたい、天然成分ってのを売りにしたい商品をこのモデルでCMにすること自体おかしいと思わない?」
「確かにぃ~。」