足跡

指定された居酒屋に着くと、俺以外に既に３人が集まっていた。

「あっ!!紘平～!!」
その中の一人が俺に気付いて大声で手を振りなが名前を呼んだ。
少しだけ恥ずかしかったが、たったそれだけのことだったが、一瞬で中学の頃に戻った気分になった。

「おう。」
軽く挨拶をして席につくと、口々に久しぶりだの元気かなど言ってきた。

「本当、久しぶりだな。いつぶりだよ？」

こいつが加藤。同じ剣道部だったから、よく一緒にいた。今はデパートの紳士服売場で働いている。

「紘平～忙しすぎなんだよ～」
このお調子者が、充。
こいつは小学校から高校まで一緒だった。
高校卒業後に留学をして去年帰国した。

「てかお前全然変わらないよな。」
こいつはヒロシ…ってあだ名。本当は関口なんだけど、みんなヒロシって呼ぶ。今はバイトをしながら役者をしているらしい。

「お前らだって変わらないじゃんか。てか雄一も来るんだろ？」

雄一は俺らのグループでは先生に対する態度は悪かったが、勉強だけはできた。
今ではIT関係の会社の役員だかを務めるエリートらしい。

「一応誘ったけど、忙しいみたいで、来れたら来るって。」
加藤が俺にメニューを渡しながら言った。

中学の時はよくこの５人で連んでいた。
毎日毎日くだらないことばかりやって、毎日笑っていたな。

「まぁ～久しぶりですし、とりあえず乾杯と致しましょう!!」
そう充が言って、乾杯をした。

それからはみんな仕事の話や中学の時の思い出話で盛り上がった。
会う度に中学の時の話はしている。毎回毎回、飽きもせずに同じ話を延々と。
久しぶりということもあり、みんなかなり酒が進んだ。

その内、彼女の話になり、ヒロシが
「そういえば、相変わらず内田と付き合ってるんだろ？」
と当たり前のように聞いてきた。

みんな一斉に食べるのも飲むのも止めて一斉に俺の方を見た。