俺はベッドの上でウトウトし始めていた。
すると、バスルームの方からガチャガチャと物音が聞こえてきた。たぶん千景がシャワーを浴び終えたのだろう。
俺はそのまま寝たフリをすることにした。

千景はバスローブ姿で出て来て、ぐちゃぐちゃに丸めた着ていた洋服を手に持っていた。
そしておもむろにベッドの上に放り投げた。
そして俺に背を向けてベッドの端に座った。

俺は薄目を開けて、その姿を確認し、
「服!!」
と言うと
「!!!びっくりしたぁ~。起きてたの?」
と返ってきた。

「服、ハンガーにかけるかきちんとたためよ。」

「ふふっ。」

「皺になるぞ。」

「わかったわかった。紘平もシャワー浴びてきなよ。」

ほんとにわかってんのかね、この女は…

「ちかさぁ…」

「ん?」
そう言いながらベッドの上であぐらをかいて、タオルでゴシゴシと頭を拭いていた。

「親父だな。」

そう呟くと、千景には聞こえていなかったみたいで、

「えっ!?なに!?」

と更に尋ねてきたので、
「…すっぴんも顔変わらないな。」

と言った。

千景は少しだけ面倒臭さそうな表情をして、
「ふふっ。早くシャワー浴びておいでよ。」
とシャワールームを指さした。

俺は重たい体を起こしてその場で服を脱いだ。

「えっ?ここで脱ぐの?」
千景は今度は迷惑そうな顔をした。

「だってどうせ脱ぐんだし、面倒くせぇじゃん。」

そう言って、脱いだものはベッドに放り投げてバスルームへと向かった。