千景と駅に向かう途中、久しぶりに変な気分になってしまった。

「ちか、明日仕事?」

わかっていたけど聞いてみた。

「明日?明日土曜だよ?休みに決まってんじゃん。紘平酔ってるでしょ?」

「酔ってないよ。…じゃあさ…」

「何?どうした?」

俺は少しだけ迷って、
「ホテル行こ?」
と、千景の耳元で小声で言った。

千景はあまりびっくり様子もなく、俺をジッと見つめて少しだけ微笑んだ。
そして繋いだ手を更に強く握りしめて、
「どうしたの?お酒飲んだらヤりたくなっちゃったの?」
と聞いてきた。

「だから飲んでへんて。」

「ふっ。また関西弁。いいよ。行こ。あたしも行きたかったの。」

そう言って俺の手を引っ張って、ホテル街の方へと促した。


この人は、ほんとに。
何でも見透かされているような気がしたのと、これからの展開を想像したら恥ずかしくなってしまった。


その日は酒を飲んだのもあるけど、高原とあんな話をしたから珍しく俺にも性欲ってもんが湧いてきてしまったんだ。



ホテルに着き、部屋に入りドアを閉めると同時に我慢出来ずに千景にキスをした。

「ちょ…紘…」

時折、重ねた唇から漏れる千景の声が聞こえたが、そんなのは無視してひたすらキスをした。

そのまま服に手をかけようとした瞬間…

「紘平ってば!!」

この一言で我に返った。
「あぁ。ごめん。」

何、謝ってんだ、俺。

「ううん。ちょっとさすがに1日汗かいたから先にシャワー浴びたいんだけど…」

「あぁ。そっか。うん。先に浴びちゃって。」

「すぐあがるから。」

千景はそう言うと、鞄をベッドの上に放り投げてバスルームへと向かった。


何なんだ、俺。
高原に触発されたのか?

俺はベッドに座ると、そのまま後ろに倒れた。

そう言えば、俺たちの初めては高校一年の夏休みだったよな。
ちょうど千景の親が離婚した頃だったな。