結局、0時を回ってもおばさんは帰って来なかった。

「ったく。お母さん待ってても仕方ないから部屋行こ。」

「いいの?待ってなくて。」

「いいよ。きっと調子乗ってカラオケとか行っちゃってるんじゃん?」

「ハハッ。行ってそ~」

「行こ行こ。あたし、眠いし。」


そう言って、俺の手をとり、リビングの電気を消すとそのまま俺を部屋まで引っ張って行った。


久しぶりに千景の部屋に入ったら、何か緊張してしまった。
相変わらず雑誌やら本は床に置きっぱなしだし、テーブルの上にはチャーハイの空き缶やらアクセサリーやらが無造作に置いてあった。

部屋に入ると、千景は何か思い出したように部屋を出て行った。
仕方ないの俺は散らかった雑誌をまとめたり、空き缶を片付けたりした。

てかこれ大事な資料とかじゃねぇの?
ファイルに入った数字がびっちり書いてある資料らしきものも一緒に置かれていた。

その時、ドアが開いた。
千景は手にグラス2つと麦茶のボトルを持って帰ってきた。


「あのさぁ、これ大事な資料とかじゃねぇの?」

俺はさっきのファイルを見せた。

「あ~それねぇ…別にもういらないから。」

「そっ。んじゃ捨てるよ?」

「いや!!一応とっておいて!!」

「…」

物を捨てれらないってこういう奴のことを言うんだな。

物を捨てれらない代わりに、千景は記憶力がすごくいい。
ふたりでデートでどこどこに行って、あんな事があったとか、何を食べたとか細かい所まで覚えている。


千景はグラスに麦茶を注いでテーブルに置いてそのままベッド寝そべった。

「お前、人に掃除させて寝る気?」

「気のせいじゃない?」

「気のせいじゃねぇよ。空き缶すぐ捨てろよ。」

「ふふっ。気のせい気のせい。てかもう寝よ。」

「ちょっと片付けろよな~」

ある程度まとめて電気を消して、俺も千景の横に寝そべった。