千景の家は女三人で暮らすには広すぎる。

俺たちが小学生の頃に千景の父ちゃんの方のばあちゃんと一緒に住むことになった。
その時にバリアフリーってことで、家を建て替えた。
一時的に住んだりはしたけど、結局あぁなってしまったので、今では三人で住んでいる。


このままここで一緒に暮らしてぇな。


さっさと入浴を済ませてリビングに戻ると、千景は携帯で真剣にゲームをしていた。
その真剣な表情…
好きなんだけど、ゲームって。

勝手に冷蔵庫を開けて、麦茶をグラスに注いだ。

千景の方を見たら、依然としてゲームに没頭していた。

麦茶を飲みながら、千景の隣に座った。

「…何のゲーム?」

「えっ…」

携帯の画面を覗いたら、どうやらパズル的なもので数を足して、ブロックを消すような類のものみたいだ。

またまたにやけた。

「何ニヤケてんの?」


何で俺が聞いても答えなかったくせに、ニヤケたのはわかるんだよ。

「そんな自宅で真剣に携帯でゲームやってる25歳なんていないなぁ…って思って。」

「そぉ?これ今、ハマってて…」

「電車で真剣にゲームやってるおっさんだぞ、その顔。」

「あ~!!終わっちゃった~」

「…ごめん。」

「ったく。」


俺は千景が真剣な時の表情が好きだ。
千景が真剣な時の表情はまるで金縛りにあったような感覚に陥る。


「ちか、明日仕事は?」

「ん?いつも通り。11時から。紘平は?」

「どうしよっかな~?」

「休むの?」

「ん~俺も11時頃行こうかな。」

俺は仕事の内容によって時間に変動があるから、仕事に合わせて出勤できる。

「ふ~ん。んじゃ9時半頃出る?」

「いいよ。ちかに合わせる。」

「じゃあ10時でいい?」

「いいよ。」

「♪~」


ほら。
また鼻歌で返事した。