よし、地獄のような、修羅場を抜け、ついにやってきた。
 何がって?
 サンティブですよ、サ・ン・ティ・ブ!
 略さずに言うと、『サンシャイン・クリエイティブ』。
 けっこう大きいイベントである。ちなみに、イベントはジャンルに限らず、大小、格式など違いが多々ある。
 クラブのイベントもそうであるように、やっぱり会場の広さ、主催者やDJの知名度、歴史で観客も変わる。
 つまり、私たちのイベントも同じく、来場者はイベントの総合的な良し悪しで決める。
 今回はなかなか大きいので、多くの来場者が期待される。
 ちなみに常連さんなんてのも付いているから、嬉しく楽しい。
 さて、時恵を起こさなくてはならない。
 荷物の準備は昨日のうちに、私が全てやった。時恵の天然ボケには任せられないからだ。そんな役割を分かっているのか、どんなに疲れてても、時恵は荷物を全て運んでくれる。けなげでいい子だ。
 「ほら、時恵、起きてー」
 「うぃ…」
 ガサガサと物音を立てて起きる時恵。
 「うし、起きましたよボス」
 「よし、あと一時間で支度してね。ご飯はそのあとね」
 「手料理?」
 「悪い?」
 「カレー?」
 眉をひそめながら、時恵が聞いてきた。
 「そーよ」
 私の料理のレパートリーは少ない。中でもカレーはヘビーローテーションだ。
 「またっすか社長!」
 「またって、この間はポークだったでしょ。今日はシーフードだから!」
 「結局カレーじゃないっすかぁ!二カ月越しの料理がまたカレーって進歩がないよ!」