あの事件の事は、初めて会った日に話した。
アキにすらまだ話していないのに。
そういえばアキ、元気かな。
久々に季節相応の、冷たい風が突き刺さってきた。
「大丈夫すか?寒いでしょ、着ててくださいよ、学ラン」
「大丈夫、大丈夫。川崎君に風邪ひかれちゃ困るし」
気遣いは本当に嬉しいのだけれど、本当に困る。
もし川崎君が風邪をひいたらここへ来てくれなくなる。
そうなるとまた、"一人"だから。
川崎君と会うまでは"一人"だったくせに。
私の中の過去の自分が現在の自分を皮肉る。
確かにあなたの言う通り。
「風邪ひいたら看病してもらいますよ、水原さんに」
そう言ってニッと笑う川崎君に思わずドキッとする。
異性とこんなに近くで、こんなに長く話すのは凄く久々のような気がする。
「でも俺らってホント似てますよね」
ほら、また話が飛んだ。
「俺もう学校辞めちゃおっかな」
「それはだめ」
「なんでっすか。水原さんならわかってくれるっしょ?俺ら似たもの同士じゃないすか」
川崎君は所謂"いじめ"に遭っていた。
家にも学校にも居場所がないらしい。
私の負った傷なんか擦り傷だよ。
川崎君のは全治一生の重傷だよ。
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