何度か来たことのあるアキちゃんの部屋は、相変わらず散らかっていた。


「いつも凄いね」

「どーゆー意味よ、それ」


自然と笑みが零れる。

お皿の上に出された、アキちゃん手作りのチョコクッキーを口に入れる。

いつもより、甘い。


「アキちゃん、彼氏できたでしょ」

「えっ……」

「ビターじゃないもん」

クッキーを一つ、摘み上げる。
途端にアキちゃんが、はにかむ。


「実は、ね」

少し躊躇ってから、私の目を見る。


「祐太郎と付き合ってるの」

「いつから」

「テスト前。だから今回全然勉強に集中出来なかったよ、いつもだけど」

「へーえ」

別に、驚きはしなかった。
逆に、やっとか、と思った。


「何よ、その顔」


恐らく、気持ち悪いくらいに笑顔だったのだろう、私の顔は。


「別に何も。でも、おめでとう」


アキちゃんは照れ隠しにオレンジジュースを一気飲みする。

つられて、私まで恥ずかしくなって、ストローで一口含む。

色んな甘酸っぱさが、体全体を支配する。


外ではまだ雨が降っている。




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