眼鏡をかけて体育館に戻る。
得点が、ぼやけず見える。

1セット、取られていた。

「アキちゃん」

「あ、紗都。なんか向こう強いかも」

アキちゃんの隣に座る。

「さっき紗都が見てた水無月君、あの子凄かったんだから」

「…え」

見ると、その水無月君が、丁度アタックを決めた。

顔を見る。
やっぱりあの人だ。


「ねえアキちゃん、あの水無月君って子、私がいつも電車で会う人かもしれない」


確信はあるけど、"かもしれない"としておく。


「えっ、マジ?年下じゃん」


アキちゃんの言葉の最後は、けたたましく鳴った笛にかき消された。

私達はいきなりの事に驚き、コートを見た。

井上君がボールを床に投げつける。

完敗だった。
そして、あっという間だった。


でも私には井上君を慰める余裕も、何も無かった。

水無月君が控えめにクラスの子達と喜ぶ姿がレンズ越しに見える。


今年も、クラスマッチが終わった。

それぞれに、それぞれの思いを残して。




.