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で、今に至りました。
あれから結局、隣同士にも関わらず一度も顔を合わせることはなかった。それは私にとってはとても有り難いことで、出来れば一生このまま一度も顔を合わせたくはなかった。
だけど、そこまで幸運が続くことはなく、スウェット上下(米粒と鼻水とよだれつき)で顔も歯も洗っていない、寝癖全開の状態で彼との再会を迎えた。
トボトボと自分の部屋の前まで行き、開けっ放しだったドアを開けた。
「おはようございます。」
いきなり横から声がして、一瞬ビクっと肩を震わせると、イケメン男とは正反対のお隣さんだった。
スーツをキッチリ着こなした姿は、世の女は一瞬見惚れてしまうほどのイケメンサラリーマン。
「おは、おはようございます!!」
キョドって声が裏返ってしまう。
あぁ、どうしてこんな格好の時に限っていろんな人に会うのだろう。(いつものことだけどね)
じゃっ、と爽やかに笑って軽やかに歩く後ろ姿は、まるで、
「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は……あれ?なんだっけ?」
こういうのって嫌なんだよな。気になって気になって仕方がないのだけれど、どうにもこうにも思い出せない。
何かアレよ、アレ。
ゲップが出そうで出ない感じと似てるね。
あと、鼻くそにあと一歩指が届かない感じ?
そんなバカげたことを考えながら部屋に入った。
