「双子なんぞいかん!祟りじゃ、祟りが起きてしまうわい!」



これ、わたしとお姉ちゃんが産まれた時に父方の祖母が言った事。



祖母は同じ様な物が此の世に二つ、存在する事は魂を持って行かれて自分が消えてしまう。という独特の思考の持ち主だったらしい。
だから写真も嫌いだった。それでわたしは祖母の顔を見た事は無いけど。


結果、祖母に逆らえる者等出ずに先に出てきた姉をわかよと名付け、妹のわたしはいろはと名付けられた。



生まれてから直ぐにわたしとお姉ちゃんは離れ離れになった。其れに未だ幼かったわたしは同じ時に同じ母体から産まれたお姉ちゃんの事は知る由も無かった。


ずっと育てて呉れた母が中学を卒業したと同時に母は病死。其の時の遺言でわたしの様なわたしじゃ無い生き物が存在する事を初めて知った。



聞いた話に因ると、お姉ちゃんは有名高校の生徒会長を勤め、才色兼備。
女子に男子に先生からも信頼は厚い、スーパーなヒロイン的存在。


この時わたしは祖母の言った事が少し解った。


同じ世界に同じ様な人間が居たら幸せじゃないという事。



お姉ちゃんに双子の妹が居るだなんて生徒達は知らないし、其れにわたしが今のお姉ちゃんの隣に居ると明らかに軽蔑されるだろう。


わたしにはこの世界が似合っている。コスプレをしながら一生、陰で生きていくのだろうと思い込んでいた。其の方が良いとは思った。




しかし、突然起きた姉の交通事故。

もしこの世界に神と言う者が存在するならば、神はもうお姉ちゃんとわたしの立場に飽きて駒の位置を変えたのかもしれない。ただ、わたしの駒を置く時に神の肘が当たってお姉ちゃんの駒が倒れてしまったという感じ。


「遺体は損傷が激しく、御目に掛からない方が宜しいかと思います」


お姉ちゃんの顔は分からないから、代わりにわたしが「損傷が激しい遺体」に為った積もりで考えてみた。



・・・結構、グロテスクな絵。きっとお姉ちゃんもわたしにこんな顔を見られたくないと思う筈だから「分かりました」とだけ返しておいた。