鳥啼くいろは歌




最後まで押して、顔を上げると一人の男の人。



ピシッとしたスーツを着こなす長身。それでもって物凄い良い容姿。
恐ろしい位にハスキーボイスと釣り合って居た。



顔を見上げて終始無言で彼を見つめた。そしてバッチリ目が合ったら彼の方から逸らして来ている。



そしてハスキーボイスの彼に面と向かって会い、初めて彼がわたしに向かって投げかけた言葉。
それは棘が沢山有る鉄球の様で、酷くわたしに傷を付け。
それは丁寧に磨かれた翡翠の様で、こんな言葉でもわたしは魅了された。




「いろはってさ、背小さいよね」




むっ・・・。


確かに彼とわたしとじゃ比べ物にならない。



わたしがもしチワワとするなら彼はドーベルマンって所。




声も出ないわたしを見てか、彼はその長い身体を折り曲げてスーツのポケットから名刺を出してわたしに渡した。



「星空高等学校教師 松江昴」



へぇ、今の教師って名刺って持ってるもんなんだ。



その下には何故か手書きで携帯の電話番号とメールアドレス。
そして止めるが若干少ない特有の癖字で「須土いろは育成指導係」と。



確かに、今思えばこうなって必然だったのかもしれない。



電話に出たのも、家に迎えに来たのもハスキーの彼、松江昴だっただなんて。



「あれ?驚かないんだ。流石双子だね。無愛想な所わかよにそっくりだよ」




彼は手馴れた手付きでわたしの髪の撫で付ける。其の行動にわたしは肩に力を入れた。

「あの、わたし名刺とか持ってないです」