「いいから、2人で行ってきて。俺達も後で出かけるからさ。」

私と優羅で2人を見つめると、観念したのか“分かった・・・”と言い、行く場所を相談し始めた。

「ごちそうさま。」

朝食を食べ終え、食器を流しに持っていくと、後ろから優羅が耳打ちをしてきた。

「今日2人にプレゼント買いに行こう。澪も一緒に選んだって知れば、泣いて喜ぶよ。母さんも父さんも。」

そんな大袈裟な・・・なんて思いながらも、祝ってあげたい気持ちは確か。
本当は深翠さんに本を返しに行くつもりだったけど、明日にしよう。

そんなこんなで、私と優羅はプレゼントを買うため、街へと出かけることになった。
母と優さんは悩んだ末、日帰り温泉に行くことにしたらしい。
“なんなら一泊してくれば?”という優羅の言葉に、“夕食は絶対にどこか食べに行くからいいんだ”と優さんが楽しそうに答えた。

母と優さんは本当にラブラブだ。
見てるこっちが恥ずかしくなってしまう程に。
今までこんな風に2人を見ることはなかった。
まして光の本を読む前は、母を信じることができなくなっていたのだ。

「ほんとに魔法のお店だ・・・。」

自然と出た言葉に思わず笑ってしまった。



「さて澪、何を買おうか。」

私と優羅は今、駅の近くにある大きなデパートにいる。
来たはいいが、何をプレゼントするか全然考えてなかった。

「何あげたら喜ぶかな・・・。」

店内にあるお店の看板を見ながら呟いた。

「とりあえず、見て回るか。気に入ったのがあればリストに載せて、一番いいのを買おう。」

優羅がそう言って、手を差し出してきた。
何をするのか分からなくて、じっと手を見つめてみた。

「手、繋ぐの嫌?」

優羅が私の顔を伺うようにして聞いてきた。

「あ、そういう意味だったんだ・・・。」

誰かと手を繋ぐなんて行為はほとんどしたことがない。
だから少し緊張しながら、自分の手を優羅のそれに重ねた。
初めて繋いだ優羅の手はすごく暖かくて、なんだかくすぐったかった。