【長編】ホタルの住む森



神様…


どうか…彼と共に生きる時間を下さい。

晃を残して逝かなければならない私に…もっと時間を下さい。

私に残された時間は…余りにも短すぎるから…。

どうか…彼を独りにさせないでください。

私の心を読んだように、晃がギュッと抱きしめる。

柔らかな綿のシャツ越しに体温が伝わって、自分が今、確かに生きていることを実感できた。

晃の腕の中、彼の愛を全身で感じ、安堵する。

不安も、苛立ちも、晃が吸収してくれたように、何処かへ消え去っていった。

「茜。婚姻届…書こうか。
早く君に高端 茜になって欲しい。一秒でも早く…」

一秒でも早く…

それは一秒でも長く、彼の妻でいて欲しいということだろう。

カウントダウンはもう始まっている。

砂時計の残り砂は、確実に重力に導かれるように、その速度を加速しながら落ちている。

一秒でも早く…

一秒でも長く…

それが私たちのささやかな願い