ベッドサイドテーブルの引き出しを開け、その中から小さな小箱を引っ張り出すと、中身を取り出し窓から差し込む朝日にその輝きをかざしてみる。

朝日を受けてキラリと光るそれは情熱を映す燃えるような赤い宝石(いし)。


君がこの指輪をはめる日はそんなに遠い日では無いと思う。

箱を引き出しに戻し、サイドテーブルの上に置き去りにされた昨日の名残の桜の枝を取り上げるとその場に茜がいるように語りかけた。

「君は僕の前でだけは泣き崩れていいんだよ。
君の弱さも苦しみも悲しみも、僕に預けて楽になって欲しいんだ」

僕の声が茜に届くようにと願って小さな花に語り続ける。

桜の花が茜の笑顔に重った。

最後の時まで凛として毅然と散ろうとする桜のような君。

だけど…僕はそんな悲しい強さを持とうとする君を痛々しくて見ていられない。