【長編】ホタルの住む森


「茜が僕に刑を科すだって? …笑えない冗談だ」

「解らない? 私達が愛し合ったことで、本来結ばれるはずだった陽歌ちゃんとあなたは出逢うことなくすれ違った。そして私を失ったあなたは長い間時間を止め、孤独な時を生きてきた。運命を歪められ、一生孤独の中で生きていく事があなたに科せられた罪だったの」

「…じゃあ何故陽歌は僕の前に現れたんだ?」

「…それは…暁を授かったからよ」

「暁を?」

「暁には暁の担(にな)うべき使命があって、彼はその為に生まれたの。私達の間に授かったのが特別な意味を持つ子だったから、あなたは減刑されたのよ。
私は一度歪められた運命を修復する為に陽歌ちゃんに出逢ったんだわ。あとは時期だけだった。私の死後、時を経てあなたと陽歌ちゃんが再び出逢うまでには、あなたの罪が消えるだけの時間が必要だったのね。
でも生きていた頃の私はそんな事を知らなかったから、陽歌ちゃんの中に強い想いを残してしまった。そのせいで随分彼女を苦しめてしまったわ。
願いを叶えてもらった今、私はいつまでも彼女の中に居るわけにいかないの」

「僕だけが罪を許されて君は幸せになる事無く逝こうというのか?
そんな事を僕が許すと思う? 君は陽歌と共に僕の傍で生きるんだ。この世から消えることは許さない」