暁から数歩下がった時、晃が茜の名を呼んだ。
茜が惹き付けられるように、ゆっくりと振り返る。
互いの瞳が合った瞬間、どちらからともなく手を伸ばした。
長い時を経て再び腕の中に戻った温もりを、晃が強く抱きしめる。
茜は縋るように晃の胸に顔を埋めた。
「茜…茜…本当に君なんだね。ずっと待っていたよ。君が還って来るのを…。もう離さない。二度と…」
「…晃…私もずっと会いたかった。こうしてあなたに触れたかった。…でも…これが本当の最後よ」
「……え?」
晃は再会できた喜びに浮き立っていた心を、鷲掴みにされ床に叩きつけられたような衝撃を受けた。
思わず抱きしめる腕に力が入り、否定を求めるように唇を奪う。
茜は苦しげに眉を顰めたが、晃を宥めるように激しい感情を受け止めた。
「どうして…やっと還ってきたのに、君はまた僕を独りにするのか? もう嫌だ。…僕は…今度こそ君と一緒に逝く」
「ダメよ晃。そんな事をしたら陽歌ちゃんが哀しむわ」
「…っ!」
「自ら命を絶つことは罪。二度と…同じ罪を犯してはいけないの。あなたにはまだ現世で成すべきことが残っているわ。天命を全うしなければならないの」
「二度と…同じ罪を?」
「あなたは試されているのよ。前世の罪を償う為に…。」
「前世? そんなもの関係ない! たとえ何度罪を重ねたとしても、どれほどの罰を背負うことになっても、僕は君を手放さない。もう二度と…君を失うのは嫌だっ!」
悲痛な叫びを上げ、抱きしめる腕に更に力を込める晃を、茜は優しく抱きしめ返し、名残を惜しむようにその胸に頬を寄せた。



