「暁…会いたかったわ」
茜は暁に向き合うと頬に手を伸ばしたが、触れる直前で戸惑った様子を見せ、そのままギュッと自分の胸の前で握り締めた。
暁に寂しい思いをさせてしまったという罪悪感から、自分から触れることはできなかったのだ。
感情を殺すように首を横に振ると、フワリと優しい香りが辺りを包む。
何処か懐かしい香りに、暁は胸が温かくなるのを感じた。
「…あなたが…母さん?」
茜は静かに頷いた。
「ごめんね…暁」
「え?」
「ずっと、謝りたかったの。本当にごめんね。育ててあげられなくて」
暁の中に不思議な感覚が広がっていった。
懐かしい香り。優しい微笑み。柔らかな話し方。
目の前にいる女性は昨日出逢ったばかりのはずなのに、心のどこかで彼女を覚えていた。
かつて自分だけが見ることができた天使とは容姿も声も違う。
だが、あの頃天使を母だと確信できたのと同じように、今、目の前にいる女性が自分の母親なのだと、理屈ではなく本能が理解していた。



