「ただいま…蒼」
陽歌が口を開いたとたん、部屋の空気が一変した。
これまでの雰囲気とは明らかに違う陽歌に違和感を感じたのは晃だけではなかった。
だが蒼は驚く様子も無く穏やかに微笑み返した。
「おかえり…茜 」
蒼は茜をふんわりと抱きしめた。
「蒼は私のしたかった事に気付いていたのね」
「確信は無かったわ。でも私があなただったら…と考えれば簡単なことよ。私達は双子だもの。茜の考える事なら誰より分かるつもりよ。
ごめんね。もっと早くに…如月さんから手紙を貰ったときに気付くべきだった。…そうすれば茜も晃君もこんなに長く待たずに済んだのに」
「ううん、この時間は必要なものだったの。機が熟したからこそ、こうして還って来る事ができたのよ。蒼が私の最後の我が儘を叶えてくれたおかげよ。本当にありがとう」
茜は蒼を抱きしめ返し、その肩越しにゆっくりと部屋を見渡した。
真っ先に視界入ったのは呆然と二人を見つめる晃だった。その瞳には薄っすらと光るものが滲んでいる。
陽歌と茜の関係を予想していた右京は静かに成りゆきを見守り、その隣で暁は胸がざわめくのを感じながら二人の様子を見つめていた。
時が止まったような静寂が部屋を包む。
目の前の出来事は夢で、小さな物音一つで全て消えてしまいそうな不安から、誰も言葉を発することが出来ないでいた。



