「人を待たせて随分と楽しそうじゃないか。呼び出したのはお前だろ?」
「鍵は開いていたんだから、入ればいいのに」
「バーカ。あの雰囲気で入れる神経の太いヤツがいたらお目にかかりたいよ。ドア越しに色々聞こえるから暫く待ってたんだぜ。でも一向に奥に移動する様子は無いし、しょうがないから暁に様子を見に行かせたんだ。
ったく、軽いとはいえ6年生ともなるとこうしてずっと抱いているのも辛いんだぜ? いい加減ベッドに寝かせてやってくれよ」
「あぁ、そうだ。待たせてごめんね杏ちゃん」
晃が杏にだけ優しい言葉を掛けると、右京は苦々しい顔で「ほら、どけよ」と晃をワザと押しのけて奥へと入っていく。
「暁のベッド借りるぞ。あそこなら夜中に起きても驚かないだろうからな」
と勝手に暁の部屋へ向かった親友の後姿に苦笑しながら、晃もその後に続いて靴を脱いだ。陽歌も晃に促されリビングへと向かう。
だが数歩歩いた時、晃が何かを思い出したように玄関を振り返った。
「あれ? ねぇ右京、蒼は?」
晃の問いかけが陽歌の中の何かを揺さ振った。
あおい…
心の中の何かが、ビクリとその名前に反応した。



