「はい、実は私も先生にお話ししたいことがあって、今、電話を掛けようか迷っていたんです」
『本当に? 凄い偶然だね。実は…こんな夜更けに悪いけど、今から会って話すのは無理かな?』
「えっ、今からですか?」
『ごっ…ごめん。そっ、そうだよね。気持ちが急(せ)いてしまって、失礼なことを…。やっぱりこんな時間にお願いするのは君の婚約者に申し訳ないね。本当に申し訳ない。気分を害したら許して欲しい』
陽歌の驚きを否定と取った晃は、冷静なときなら絶対にしない失態にようやく気付き慌てて謝った。心臓がバクバクと暴走を始める。焦って謝ると舌が縺れてしまい、上手く喋れない。
まるで自分の体ではないようだった。
「いえ、あのっ、彼は婚約者じゃないんです。違います。婚約なんてしてないんです私。それに、私も先生にお目にかかりたいと思ってて…。お電話を頂けてとても嬉しかったんです」
『……本当に? 嬉しいよ。今どこにいるの。自宅? 昨日のホテル?』
晃は自分の声が弾むのを感じた。
居場所を確認したら、すぐにでも車を飛ばして迎えに行くつもりで身構える。
先ほどまで動揺で暴走していた心臓は、再びときめきへと変化していた。



