陽歌はタクシーの中で晃の番号を表示した携帯を握り締めたまま悩んでいた。
民宿を飛び出してきたものの、もう深夜に近い時間である。この時間に晃に電話をする事は戸惑われた。
「…11時20分かぁ。やっぱりいくらなんでもこの時間にいきなり電話して押しかけたりしたら失礼よね」
携帯を閉じ、やはり今夜はホテルに泊まろうと決めたその時、手の中の携帯が晃からの着信を告げた。
思いがけないことに、心臓が跳ね上がる。
携帯を持つ手が震え、もどかしい思いで通話ボタンを押した。
「もしもし……晃先生ですか?」
『陽歌さん?ごめん、こんなに遅くに…。今ちょっとだけいい?』
陽歌は声を聞いただけで胸が締め付けられるのを感じた。
晃もまるで10代の少年のように胸が高鳴るのを感じていた。



