これまで煙草嫌いの陽歌の前では決して吸わなかった拓巳が、初めて煙草に火をつけた。
紫煙がゆっくりと立ち上る。
拓巳が溜息と共に煙を吐き出すと、部屋が白い煙で満ちる。
煙のベールが陽歌を拒絶し、早く出て行けと言っているように見えた。
「ごめん、拓巳。…本当にありがとう」
陽歌は感謝の気持ちを述べると、罪悪感を振り切るようにして部屋を出た。
騒ぐ心を宥めるように押さえ、タクシーを拾ってあの丘に向かった。
晃に何を伝えればいいのか…
茜の想いをどう伝えればいいのか…
考える余裕は無かった。
ただ、会いたい…
そう思った。



