【長編】ホタルの住む森


「……おまえバカだな。やっと自分の気持ちに気付いたのか? 晃先生への気持ちは茜さんが残したものだけど、今はお前のものなんだぞ? 何度も言ってるだろ? おまえ自身が茜さんなんだって」

拓巳の手が退けられ、閉じたままの瞼に明るさを感じる。

部屋の蛍光灯がやたらと眩しく感じて、陽歌は手で光を遮りながらゆっくりと目を開けた。

陽歌を開放した拓巳はテーブルの上の灰皿を引き寄せると、背を向けたまま、早く行けと軽く手を振り煙草を取り出した。

「……行ってもいいの?」

「…ああ。それがお前の幸せなら、俺は反対できないよ。好きな女には幸せになってほしいからな。俺以上に陽歌を幸せに出来る男がいるとしたら、あの人だけなんだろ? だったら行けばいい。
だけどな、これだけは約束しろ。晃先生を選ぶなら決して今日の選択を後悔するな。
お前は仕事では妥協しないのに恋に関しては本当に臆病でドン臭いみたいだからな。自分で決めたんだから、もう自分の気持ちを疑ったり迷ったりして逃げるなよ。
その気持ちはお前のものだ。その記憶もお前のものだ。お前は陽歌であり茜さんでもある。一人で二人分の人生を生きてきたんだ。…堂々と晃先生に告白すればいいんだよ」