【長編】ホタルの住む森


亜里沙、ごめん。

やっぱり私にはこの手を取ることは出来ないよ。

晃先生とは出逢ったばかりだけど…それでも私は晃さんが好きなの。

臆病な私は真実を受け入れることが怖かった。

でも、受け入れなくちゃいけないよね。

私の中の晃先生と過ごした沢山の夜と朝の記憶。それが全て茜さんの思い出だった。

彼を愛しく思う気持ちはこんなにもあるのに、この気持ちは私のものじゃない。

彼を愛していたのも、彼に愛されたのも、茜さんであって私ではない。

私が知っている彼の優しさも、広い胸も、熱い唇も、その全ては茜さんに捧げられたものだった。

その事実が哀しくて、受け入れられずにいた。

でも…

それでもいい…

私の中の彼女を想っていてもかまわない。

たとえ愛されているのが私でなかったとしても…

この気持ちが茜さんのものであったとしても…

それでも…彼の傍で生きたい。

ねぇ、馬鹿だと思う?

それでも亜里沙、あなたならきっと解ってくれるよね?

だってあなたも拓巳の事を…

そうなんでしょう?