【長編】ホタルの住む森


「…心を決めたのか? なら約束してくれ。俺を友人ではなく夫として愛して欲しい。そして生涯俺だけを愛して添い遂げろ」

拓巳の真剣な想いが言葉が胸に突き刺さった。

本当に彼の愛に応えて生涯を共にできるのか。

私は彼を夫として愛していけるのか。

自らに問いかけてみるが、迷わず頷くことはできなかった。

返事をできずにいると、拓巳は右手で陽歌の目を覆った。

視界が遮られ、何も見えなくなる。

「…陽歌、愛している」

闇の中に響くのは拓巳の声。

それなのに、目の前に浮かんでくるのは晃の顔だった。

心を偽って身を任せても、胸の奥底にはどうしても諦めきれない想いがある。

涙がぽろぽろと流れ落ち、拓巳の手を濡らしていった。

拓巳を好きだと思う気持ちは、恋愛とは違う。

拓巳の手は温かいし心地良いけれど、真剣な彼の気持ちを利用する事は出来ないと思った。

この手を取るのは自分ではない。

心から拓巳を愛している女性こそが、この手を取るべきなのだ。

瞼の奥に、お節介な親友の顔が浮かんだ。